深夜の馬鹿力の1009回記念放送を聴いて

大分遅れてしまったが、『月曜JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力』の放送1009回記念企画についての感想を少し。

前置きとして、番組について軽く触れておこうかと思ったのだが、気の向くまま、チンチンの向くままに書き出したところ、収集がつかなくなりそうだったので、それについてはまた別の機会に改めて書くとして、今回は、純粋に表題の件についてだけ書くことにする。番組について存じ上げない方もいるだろうが、そういう人は全力で無視する方向で行こうと思う。

というわけで、1009回放送の感想。

スペシャルウィークの何週か前の本放送で、伊集院さんの口から、「過去のコーナーの振り返りをやります!」と聞いたとき、嬉しい反面、「そういうことやるような人じゃないのに、どういう風の吹き回しだろう...」と、どこか素直に喜べない自分がいた。『そういうことやるような人じゃない』と決めつけられるのは、本人的に不服かもしれないが、以前にTwitter上で、「過去のコーナーはもうやらない」といったことを匂わす発言を何度もしていたので、最初は乗り気ではなかったのでは、と勝手ながら思っていた。そんな、『登校拒否の息子がいきなり、「俺、学校に行くよ!」と言い出して逆に戸惑う母親』のような気持ちでスペシャルウィーク当日を迎えたが、そういった心配事は全て杞憂に終わった。放送は非常に楽しかった。

いつ頃からだろうか。スペシャルウィークに特別な企画を一切やらなくなり、普段以上に普段と変わらない放送をするようになったのは。
深夜ラジオが好きな人ならお馴染みのあるあるとして、『スペシャルウィークより、普段の放送の方が面白い』というものがある。こと深夜ラジオにおいては、ゲストを招いたり、何か特別な企画をやるよりも、いつも通りのフリートークをやり、通常コーナーをやってくれた方が、むしろ安心感があって面白い場合が多い。また、投稿している人にしてみたら、スペシャルウィークは、普段より読まれるメールの量が減る分、あまり嬉しくない面もあるのだと思う。実際、自分にもそういう時期があったし。ただ、それでも、「たまには何かやってほしいな」という気持ちも、少なからずあったのが、正直なところだ。
そんな状態だっただけに、「その時 人類は思い出した スペシャルウィーク様の存在を」というナレーションと共に、スペシャルウィーク様がのっそりと壁の向こう側から顔を出したときには、私を含む馬鹿力リスナーたちは、恐れ戦き、ガクガクと震える体を抑えるのに必死だった。数週間前に、「皆の者!もうじき、スペシャルウィーク様がお目覚めになられる!手遅れになる前に逃げるんじゃ!」と騒ぎ立てて村人から処刑された大長老の言葉が脳裏に一瞬浮かんでは消え、浮かんでは消えしている中、僕たちは、為す術もなく、スペシャルウィーク様に完全に飲み込まれてしまった。と、それほどまでに、今回のスペシャルウィークは強い衝撃を与えてくれた。

内容について具体的に触れると、今回、2週に渡ってコーナーを振り返った訳だが、コーナーのランキングは以下のようになった。

第18位 UP’S(アップス)音頭
第17位 ナイナイアルアルコーナー
第16位 性のコーナー
第15位 集え若人!深夜の歌声喫茶
第14位 リストカッターケンイチ
第13位 ラジオ青春アニメ劇場 燃えろヒカル製作委員会
第12位 輝け!紅白電波歌合戦
第11位 ちびっこなぞなぞ
第10位 天才・伊集院光プロデュース 音楽ユニット大ブレイクプロジェクト
第9位 カブトムシのひみつ
第8位 栄冠は君に輝く
第7位 あそび
第6位 空脳アワー
第5位 いつまでもたえることなく友達でいようコーナー
第4位 渡辺校長の平成ハレンチ学園
第3位 巨大ロボットヒーローラジオアニメーション「つよいロボ」
第2位 青春時代クソミュージックボックス
第1位 発表する時間なし (※みんなの心の中にあります)

番組初期のコーナーと最近のコーナーが入り乱れており、長きに渡って聴いてる古参組にとっては、だいぶカオスな印象を受けると思う。そんなカオスなランキングの中でも、特に目を引くのが、歌コーナー率の高さだ。『UP’S音頭』、『集え若人!深夜の歌声喫茶』、『輝け!紅白電波歌合戦』、『栄冠は君に輝く』、『青春時代クソミュージックボックス』。また、『つよいロボ』と『音楽ユニット大ブレイクプロジェクト』(変死隊)を歌コーナーと考えれば、3分の1以上が歌コーナーである。いやー、強いな、歌。
電波歌は言わずもがなだが、私の中で、最も夢中になって聴いていた時期にやっていた歌声喫茶のコーナーが、特に思い出深い。このとき、私はまだ高校生だったので、新潟の実家で雑音と戦いながら聴いていた。地方組としては、気軽に歌声喫茶に足を運べる都内の人を本当に羨んだものだ。『水面にプカー 「タマちゃんでーす」』を、一緒に歌いたかった。

あと、もう一つランキングを見て気になったのは、「純粋なネタコーナーが少ない」ということだ。「ランキングは必ずしも投票数だけで決めない」ということを放送の中で言っていたので、伊集院さんによるランキングの調整は、多かれ少なかれ入っているとは思うが、歌コーナーを除くと、純粋な珍文コーナーが殆どランクインしていないことが見てとれる。この事実を目の当たりにし、「今と昔で、もう大分リスナーが入れ替わってるんだろうなぁ...」という一抹の寂しさを感じた。まぁ、これだけ長年やってるんだから、そんなことは当たり前で、入れ替わってない方が異常なんだけど。

純粋なネタコーナーでいうと『三行革命』『早押しクイズQQQのQのQ』『裏伊東家の食卓』『ディレイでいってみよう』『落語リハビリ』あたりは、正直ランクインしてほしかった。特に、QQQのQのQと裏伊東家が、本当に大好きだったので。

と、そんな少々ネガティブな感想を持ちつつも、放送自体は非常に楽しく聴かせてもらった。順位が発表されるたびに「お、このコーナーくるか!」といった具合に、胸がワクワクとノスタルジーで溢れかえるのは、いつになく新鮮だった。今回の放送を聴いているとき、自分は間違いなく高校生に戻っていた。

Twitter上では、既に現役を退いているラジオ投稿者の方や、伊集院ファンの著名人が、珍しくリアルタイムで実況しており、私のTL(タイムライン)は、「あれ?マスター、今日どうしたの?いつもよりお客さん多いね。へぇ~、なんだか懐かしい顔もいるじゃない」といった様相を呈しており、平日の深夜1時とは思えないほどの盛り上がりを見せていた。このためだけに、翌日有給を取った社会人の方も何人かいたようだ(自分も取りたかった...)。「ああ、こんなコーナーあったなー」「俺、ちょうど、この頃から聴きだしたんだ」「リストカッターけんいち好きだったなぁ!」「歌コーナー、久々にやってほしい」「アン・ルイスコーナーが無かった」などなど、様々な感想が飛び交うTL。そんなTLをボンヤリ眺めながら、20年という長い年月を、ひとり噛みしめていた。

思い返すと、私が深夜の馬鹿力を聴き始めたのは、高校生の頃だった。だいたい、98年頃だろうか (それ以前の放送は、神に与えられし魔法の力によって脳に直接届けられる形で全て聴いた)。そして、今現在もなお、翌日に何か特別な用事でも入らない限りは、基本的にリアルタイムで聴くようにしているので、私の人生の大部分は馬鹿力と共に過ごしてきた、といっても過言ではない。

よく、リスナーの方で、「伊集院のラジオによって救われた」という人がいる (私の友人にもそういう人はいる)。私の場合、救われた、なんて大それたことは言えないが、思春期特有の何かモヤモヤした心のわだかまりや、厭世的な気分に沈んでどうにもならない苦しみの石塊を、この番組が、よく分からないオモシロ器具で粉々に砕いてくれたような、そんなよく分からない形で、精神的に楽にしてもらったことは、何度かあったような気がする。ラジオの聴き方なんて人それぞれだが、この番組を聴いて何かを感じ取る人というのは、どこか根っこの部分で繋がっていると思う。それは思い込みという名の幻想かもしれない。本当のものよりキレイな嘘に夢を見ているあの娘なのかもしれない((C)佐野元春)。ただ、そんな幻想を見せてくれる番組を、今後も一蓮托生で最後まで聴き続けていきたいと思っている。

最後にもう一つだけ。

昔、『タモリ笑っていいとも出演中 一方そのころコーナー』という一回こっきりの特別企画があった。
笑っていいともに出演中のタモリの様子と、同時刻のリスナーの行動を紹介するという、ちょっとした実験企画だったのだが、この企画の中で、微妙に企画意図と異なる(?)方向への展開があった。生まれた場所も、育った環境も、年齢も性別も違う中で、月曜日の深夜1時にだけは、全員がラジオをつけて、この番組を聴いているという事実に、伊集院さんが、「なんか、年甲斐もなく感動しちゃってさ」と、放送の中で言っていた。
このときは別段、自分の中で感動はなかったのだが、今回、1009回記念のスペシャルウィークを聴いて、TLを眺めながら、私もそれに近い感動に包まれていたことに気付いた。基本的に、私がフォローしている伊集院関係の方々は、私と同年代か、私より少し上が殆どなのだが、「この人たち、自分と育った環境も全く違うのに、十数年前のあの日、あの時間に、同じラジオを同じように聴いていたんだな」等と考えると、なにか妙にこみ上げてくるものがあった。青臭い言い方が続くが、『あの頃』と『今』は繋がっているんだな、と、当たり前のことなのに、それを今回の放送で改めて感じることができたような気がした。きっと今、高校生のリスナーも、10年後、20年後に、今の放送を聴くと、きっと同じようなことを考えると思う。

と、そんなことを綴りながら、今日も今日とて、堕手淫にいそしむダメ社会人。だめにんげんだもの。みとぅを。