結婚式の式場見学でメチャクチャ接待された話

最近、ツイッターで「B'zファンの私が結婚式場の下見に行ったら、デザートのお皿にチョコレートで超クオリティの高い稲葉さんのイラストを書いてもらった」といった内容のツイートが話題になっていた。それを見て、自分が式場見学に行ったときの記憶がフラッシュバックしたので、今回はそのときのことを少し書きたいと思う。

かれこれ10年近く前のことになるが、その日のことは今でもよく覚えている。かなりインパクトのある出来事だったので、当時の自分は何があったか全てメモに残していた。
なので、そのメモに書いてある内容と妻の記憶を照らし合わせると、その日の出来事をかなり正確に書き起こすことができるかと思う。あと、ネガティブな意見とも捉えかねない表現が混じっているので、式場の名前は一応伏せる方向で話を進める。

 

あれは、私と妻が結婚式を挙げる1年前のゴールデンウィーク。二人で、式をどこで挙げるか話し合っていた。妻が言うには、以前に参列したイトコの結婚式がタイヘン素晴らしく「自分が結婚するなら絶対この系列の式場が良い!」と、既に心に決めているところがあったようなので、挙式をセッティングしてもらう系列グループは早々に決まり、あとは場所をどこにするかという段になった。色々と検討した結果、全国にあるその系列の式場から、最終的に候補を二か所にまで絞り込んだ。一か所目は栃木で、もう一か所は埼玉。栃木は妻の実家がある県、埼玉はアクセスのしやすさで候補に入れた。

 

最初は栃木の式場に足を運んだのだが、これが非常に辺鄙な場所にあり、パスを乗り継いでいくのも難儀だったため、行きだけは義父に車で送ってもらった。式場の近くまで来ると、これが本当に何も無いところだった。まぁ、そういうところも含めて売りにしてるのかもしれないが(実際、かなり人気の式場らしいし)、式場に到着した時点で、申し訳ないと思いつつも「ここは無いかな...」と心の中でそっと候補から外した。ただ、せっかく申し込んだのだし、埼玉の式場見学の参考程度に、くらいの軽い気持ちで見学に臨んだ。

 

式場の正門前に着くと、担当の男性の方(仮名:田中さん)が、「ようこそお越し下さしました!」と、爽やかな笑顔で私たちを出迎えてくれた。「よろしくお願いします」と、挨拶もそこそこに打ち合わせスペースまで案内されると、机の上に置かれた、伊集院光の顔写真がプリントされたメッセージカードが目に飛び込んできた。見た瞬間、思わず「え!?」と驚いた。田中さんが離席したタイミングで妻に話を聞いたころ、見学を申し込む際に電話口で「伊集院光さんのラジオがきっかけで」と、馴れ初めを話したらしい。これは田中さんと話していく中で知ったことだが、ここのスタッフはサプライズが大好きらしい。そして、とにかく盛り上げたがりな集団なのだそうだ。きっと、友達のためにフラッシュモブをやってあげるのも厭わない人たちなのだろう。おぎやはぎのラジオでいうところの、6組軍団(学年にひとつはある、やたら団結力が強いクラス)である。

サプライズというのは意外とやっかいなものだ。サプライズを受けると、驚きや嬉しさに加えて、むず痒さや恥ずかしさがどうしてもついて回る。特に私のような、光が全く当たらない深海で長く暮らしてきた魚のような人間にとっては、浮袋が口から出てしまいそうになるのを禁じ得ない。ただ、向こうは100%善意でやってくれていることは分かっているので、浮袋が出ないように、全力でサプライズを受け止められるよう心の準備だけはしていた。

 

談笑を交えながら簡単な式場の説明を受けたあと、田中さんからアンケートを頼まれた。趣味だったり、好きな色だったり、好きなアーティストだったり、様々な項目があった。私と妻の共通の好きな人物として伊集院光を書き(好きなタレントの欄がなかったので、アーティストの1人として書いた)、あとは各々、自由に記入した。そこから少し休憩を挟んだあと、田中さんから実際に式場の案内をしてもらった。

 

最初に通されたのは、緑豊かで目にも鮮やかなガーデン。そこから中庭のプールへと誘導された。プールの前につくと、辺りのスピーカーから爆音でグループ魂の『君にジュースを買ってあげる』が流れ始めた。思わず体がビクッとしたが、妻が"好きなアーティスト"の欄にグループ魂を書いたので、そのサプライズだろう、ということに数秒経ってから気付いた。なるほど、あのアンケートはこういう部分につながってくるのか。スーファミの『MOTHER2』で、ゲーム本編を始める前に「好きな食べ物」だったり「かっこいいもの」を入力すると、それが実際に本編で登場する、というシステムをちょっと思い出した。私は好きなアーティストにラルクと書いたので、別の場所でHYDEのソロ曲が流れた。

 

プールから戻ると、式場内のトイレに寄った。すると、トイレの中から、何やら結婚式場には似つかわしくない感じの音楽が聴こえてきた。よくよく聴いてみると、荒川ラップブラザーズの『アナーキー・イン・AK』だった。これにはさすがに吹き出し、思わず心の中で「音源どうしたんだよ!」と突っ込んだ。軽く補足しておくと、荒川ラップブラザーズとは、伊集院光と久保こーじによるユニットである。先ほどのグループ魂とは認知度が天と地ほど違う。こんな短い時間で音源が手に入るはずがないので、おそらくYoutubeから抜いたのだと思うが、それにしたってずいぶんと仕事が早いな、と思った。式場のスタッフが、妻からの電話を受けて『伊集院光』という単語を聞いた時点で、多方面にリサーチをかけたのかもしれないが、なんにせよ驚かされた。結婚式場のトイレで荒川ラップブラザーズを聴いたのは、世界広しといえど私と妻の二人くらいだと思う。

 

トイレから戻ると、次はいよいよ披露宴会場の方へと案内された。田中さんから「どうぞ扉を開けて下さい」と促され扉を開けると、BUMP OF CHICKENの『天体観測』が爆音で流れた。私も妻も、好きなアーティストの欄に書いてなかったので、なぜバンプが流れたのかは謎である(好きは好きだけど)。会場に足を踏み入れると、10人ほどのスタッフが温かい拍手で出迎えてくれた。一番端のスタッフは、写真を拡大して切り抜いて作ったと思われる伊集院光のお面をつけていた。バックに流れているバンプの曲も相まって、かなり謎の空間だった。そして、高砂席の中央に目をやると、伊集院さんと奥さんであるミカさんの結婚式のときの写真が飾られていた。あとで妻に聞いたら、「この演出はちょっと良いな」と思ったらしい。

で、そのまま披露宴会場で美味しいご飯をいただき、最後はもう一度プールの方に出てバルーンリリースをやった。まとまった風船を空に向かって一斉に飛ばすアレである。飛ばすときには「ハッピーウェディング」的な掛け声をするものらしい。飛ばす前に、田中さんから「ここは、ハッピー伊集院光、とかにしますか?」と地獄のような提案をされたので、即座に「いや、普通でいいです!普通で!」と拒否した。

 

ここまでの流れを読んでもらったら方なら分かると思うが、ここのスタッフはちょっと伊集院光を強く押しすぎる傾向にある。二人の共通項なので、そこをできるだけ全面に出したいという気持ちは理解できるものの、そこだけ際立たせて演出されると、小っ恥ずかしいことこの上ない。以前、空気階段のラジオで、もぐらさんが、雑誌の撮影のときに「もぐらさんの好きなアーティストだから」と気を遣われて、撮影中にずっと銀杏BOYZを流されたという話をしていた。「こんなモテない男の曲、ずっと聴いてきたの?」と周りから思われてそうという自意識からか、10人ぐらい大人が周りにいる中、オシャレなスタジオに銀杏BOYZが流れてるのがとにかく恥ずかしかったらしい。このエピソードを聞いたとき、式場でもてなされてるときの自分もそんな気持ちだったなぁ、と相通ずるものを感じた。

 

そんなこんな会場を案内してもらい、ようやく元の打ち合わせスペースに戻るのだが、ここからの営業トークがとにかく長かった。まぁ営業トークとはいっても、自分たちのことを本当に考えてくれた上で一番良さそうな提案をしてきてくれるので、「きっとここで式を挙げても素晴らしいものになるんだろうな」とは思ったが、やはり立地的な面を考えたときに、この場所は厳しいと思った。依然として心は埼玉に傾いていた。そんなこちらの思いなど露知らず、松岡修造ばりの熱量を持って営業トークを続ける田中さん。「他に好きな人がいるということを隠した状態で告白を断るときって、こんな気持ちなんだろうな」などと頭の隅で思いながら、時計の針だけが刻々と進んでいった。まぁ、会場を案内してもらって、いろんなサプライズを準備してもらって、美味しい料理を振舞われて、しかもクォーカードまで貰って、それで全て無料というのはさすがに虫が良すぎると思うし、自分が向こうの立場だったらどうにかここに決めてほしいと思うはずだ。それは嫌というほど分かった。ホント、タダより高いものは無いのである。
そしてさらに時間は過ぎ、打ち合わせスペースの上の方に「ふぇーん、もうかえりたいよー(泣)」と書かれた大きなフキダシが出て、そこに私と妻の頭から出た小さな雲が繋がっている、という状態が小一時間ほど続いたのち、「バスの時間がなくなってしまうので」ということで、契約はペンディングということにしてもらった。

 

で、結局、最終的に同じ系列の埼玉の式場に決めたのだが、今でもこの栃木の式場見学のときのことは鮮烈に記憶に残ってる。ある意味、人生において貴重な経験だった。
もし、これから式場見学に行こうと考えている人は、このブログの内容をしっかりと嚙みしめた上で、いろんなもてなしを受ける覚悟を持って臨んだ方がいいか思う。

 

ちなみに、結婚式のときの話は別の記事に書いているので、興味のある方はどうぞ↓

結婚式 - 心と身体の健康だより