爆笑問題との出会い

爆笑問題を初めてテレビで見たのは「ボキャブラ天国」だったと思う。

ボキャブラ天国とは、92年に放送が始まったタモリがメイン司会を務めるバラエティ番組である。番組開始当初は、若手芸人の「わ」の字もなく、視聴者から寄せられた投稿作品を、ゲストパネリストが品評するという、タモリ倶楽部の「空耳アワー」的な内容だった。ダジャレVTRを流して皆で笑うだけの番組なのだが、味のある映像作品が数多く作られ、当時、小~中学生だった私の心を鷲掴みにして離さなかった。「猿がバンパーのところで」など、部屋を転がりまわって笑っていた気がする(知らない人はお父さんお母さんに聞いてみよう!変な空気になるぞ!)。

放送時間帯の変更に伴い、番組のスタイルも徐々に変わっていき、素人参加型の番組から若手芸人がメインの番組へとシフトしていった。
初期のボキャブラのテイストが好きだった自分としては、若手芸人が出ることに対して、最初はどうしても抵抗があった。今になって思い返してみると、多分この頃は「若手芸人」という言葉すら知らなかった。芸能関係に疎かったんだと思う。まだ小さかったので、当たり前といえば当たり前だが、パネラー席の赤坂泰彦が若手芸人に突っ込みを入れることに何の違和感も感じないほど無垢な少年だった。そんなわけで、藤井少年の目には、「素人が何かワイワイ騒いでいるな」といった風にしか映っていなかった。

実際問題、世間的にも若手芸人が出ることは不評だったようで、番組はしばらく低空飛行を続けていたが、徐々に女子中高生を中心として若手芸人がアイドル的な人気を得ていき、いわゆる「キャブラー」とまで呼ばれるほどの社会現象になった。で、いつの間にか、自分も何だかんだで番組は欠かさず観るようになっていた。ぶつくさと文句を垂れながらもテレビは消さない、生粋のミスターテレビっ子なのである(CV:高山みなみ)。

そんな中、爆笑問題がいた。

最初、二人の印象は薄かった。小さくて声が甲高いツッコミの人と、ちょっと猫背で影のあるボケの人、ぐらいの認識だったと思う。他のキャブラーと比べると地味な二人だったので、最初の頃は、どちらかというと、華のあるネプチューンの方が好きだった。他の芸人との絡みを見て「ある程度ベテランの人たちなんだな」ということは子供ながらに感じていたが、過去に干されたことも知らなければ、GAHAHAキングで10週勝ち抜いたことも知らなかった。田中さんが、手淫するたびに自分のTシャツでチンコを拭っていた特殊な性癖など、もちろん知るはずもない (全く必要のない補足だが、手淫という言葉すら知らなかったと思う)。

ボキャブラがお茶の間の人気番組へと伸し上がっていく過程で、爆笑問題の知名度も上がっていった。その頃になると、自分も自然と爆笑の二人のことが好きになっていた(といっても「キャブラーの中では好き」程度だったが)。ネタ以外の部分での二人は、基本的に「太田さんが田中さんをチビ弄りする」というスタイルだったので、田中さんは自然と弄られキャラを確立していったが、逆に、これが枷となって、太田さんの良さがあまり出てなかったように思う。ヒロミさんが太田さんの代わりに田中さんに突っ込むことも多かったし、最初の頃は、「みんなのオモチャ」といった感じで、田中さんが一際目立っていた。「抱かれたくないキャブラー1位」という輝かしい実績も後に収めることになる。

そして、ボキャブラ人気にも陰りが見え始めた頃、爆笑問題ボキャブラから姿を消した。その頃には、既に他局でレギュラー番組をいくつか持っていたので、もう無理に出る必要もなくなったのだろう。ただ、チャレンジャーとして他の若手に混じって騒いでいる太田さんを見るのが好きだったので、正直、寂しかった。大座布団を抱えて1位の席に座っているときよりも輝いていたし、実際のところ、太田さん自身も「チャレンジャーでワイワイ騒いでるのが楽しかったから、メジャーに上がりたくなかった」と、ラジオで漏らしていたような気がする。

で、この時期に他局で始まったのが「号外!!爆笑大問題」だ。

この番組は、私が今まで観たバラエティの中で3本の指に入るぐらい大好きな番組だ。爆笑問題がレギュラーを務めた番組の中では一番好き。うちの親父も好きで、毎週必ず録画しており、私はそれを何度も何度も繰り返し観ていた。今でこそ、漫才やラジオなどで時事をバンバン切っているが、当時はそれらが全て新鮮だった。爆笑問題とニュース(特に有名人の失言)の親和性が高いということを、このとき強く感じた。
レギュラー出演者として、二人のことを昔からよく知る、コント赤信号のリーダーこと渡辺正行氏がいたこともあり、ラ・ママ時代の話がよく出てきた。二人の若かりし頃の思い出話を聞けたりと、爆笑問題のパーソナルな部分についても触れることができた。
この番組を通して、田中さんは、「常識人だけど、ちょっと抜けていることろがある、巨人・猫が好き」、太田さんは「高校時代は友達がいなかった、読書家、立川談志を尊敬している」、などなどの情報が私の脳に追記された。ただ、これも、あくまでテレビというフィルターを通した表面的な情報にすぎない。何も加工されていない二人の生の声は、まだ聴いていない。

そして、この番組をやっている最中に、TBSラジオの「爆笑問題カーボーイ」に出会うことになるのだけれど、それはまた別の話。